2010年男子日本代表・第1回強化合宿男子日本代表活動レポート(2010年3月20日〜22日) 3月20日(土)〜22日(月・祝)に、鹿島ハイツスポーツプラザにて強化合宿が行われた。 3月20日(土)合宿1日目レポート(続き) フィジカルトレーニング ミーティング 夜は、全体ミーティング後に、ポジション毎のミーティングも行いました。今回はMFとDFで理科大とのスクリメッジの反省から、現状のDFにおける意見交換を行いました。凄く重要ですよね。クラブチームも同様ですが、大学生の皆さんもチームメイトと良く会話をして下さいね。後で振り返ってみると、ミーティングはしたけど実は中身がなかった、なんて事ありませんか。ここまで、参考になったかどうか分からない文章を書き連ねてきましたが、今日本代表が世界3位という目標を掲げ活動している中で、少しでも皆さんのお役に立てるような事を自分なりにだらだら書いてきました。ちょっとは試してみてください。
私は、今回の代表メンバーの中で唯一代表経歴のないプレーヤーで、正直私より上手い選手は沢山いると思います。(だから負けじと練習しているんですけどね)しかし、W杯は国の威信をかけた戦いなので、上手い選手というよりは、チーム内での信頼の下、勝負のかけられる選手か否かが最終的には重要なんじゃないかなと思います。一見、日本代表というと華やかなイメージがありますが、土壇場で勝負のかけられる選手って、実はほんの僅かだったりします。だから私は代表経歴とか関係なく、土壇場でフィールドに立っていられる選手でありたいと思っています。そうでなければ、代表であっても悔いが残りますからね。
庶民派プレーヤー及川、応援宜しく御願い致します。ミーティング終了後 3月21日(日)合宿2日目レポート レポート執筆者: 篠原貴彦
・背番号:#1
・ポジション:G
・学年:社会人10年
・所属:VALENTIA
・出身大学:東京大学
・勤務先:三菱UFJ証券株式会社(三菱東京UFJ銀行より出向中)
・代表歴:2006年日本代表・得意なプレー:セーブ、クリア、コーチング
・注目してもらいたい点:特にコーチング(DFへの指示出し)に注目して下さい。声の大きさは日本代表の中でも
トップクラスの自信があります。
・ご覧の皆様へ一言:
日本のラクロスのゴーリー全員の代表として、日本のレベルを世界に示してきたいと思います。
2泊3日の日本代表強化合宿の2日目は、全員がラクロスに没頭する一日を過ごし、戦術面、体力面の強化と同時に、選手間でのコミュニケーションを図ることが出来る充実した一日となった。
<今回の練習メニュー>
・20mマルチフィットネスラン
・フィールドプレーヤー:ランニングトレーニング/ゴーリー:シュート練習
・AT&MF:ゴール前ピックカット/DF:スティックスキル
・ハーフフィールドオフェンス
・フルフィールドディフェンス
・ハーフフィールドディフェンス
・フィジカルトレーニング
・柔軟性測定フィールドプレーヤー:ランニングトレーニング/ゴーリー:シュート練習 AT&MF:ゴール前ピックカット/DF:スティックスキル トレーニング・柔軟性測定について)
日本代表活動においては、昨年来フィジカルの強化に時間を割いている。最近ではその継続的な取組みによる効果も表れてきており、特に自分のスコアが明確な数字となるマルチフィットネスラン、及び柔軟性測定では数字の伸びを実感している選手が多い。
これらのトレーニングは本大会の連戦でのフィジカルアップに加えて、厳しいトレーニングを継続していくことによって得られる(苦しい時間帯での)精神力にも繋がるものであり、本大会までの残り3ヶ月間で各自がどこまでフィジカルを伸ばすことが出来るか、日本代表の世界大会における成績に直結していく。ハーフフィールドオフェンス/ディフェンス フルフィールドディフェンス フルフィールドディフェンスについて)
第7回、第8回レポートにあったように、ハーフフィールドディフェンスで選手同士の距離感、バランスの良い配置を意識している中で、今回は新たにフルフィールドDFの局面に取り組んだ。フルフィールドになってもハーフフィールドと同様に、チーム全体のコンセプトである得点機会をより多くするため、自陣ゴールから離れれば離れるほど(相手陣の奥深くなればなるほど)リスクを負ってボールに対して能動的にチャレンジしていく。その中で相手がボールを出してくる方向を限定出来れば、ボールが出てくるエリアに対してディフェンスを分厚くすることでボールを奪うことが出来る。練習を繰り返す中で課題も見えた。全てのボールに対して前へアクションをすることでスペースが空き、全体のバランスが崩れる場面が多く見られたことから、ハーフフィールドのディフェンスの準備への悪影響を避けるため、「欲張り過ぎない」というキーワードを選手間で確認した。
闇雲に、全てを前でチャレンジするのではなく、10人のバランスがしっかりと取れて準備万端な時に、ボールを奪うアクションをすればするほど、DFの精度が上がっていく。敵陣で奪えなかった場合は「欲張り過ぎない」でハーフフィールドのディフェンスに移行する。
オンとオフの切り替え、特に世界大会で体格に勝る相手に対峙する時には最も重要である。ダウン 日本代表ゴーリーの取組みについて)
今回の日本代表は“世界3位”という目標を掲げて活動している。2002年の5位、2006年の6位という結果からすれば遠くない目標にも見えるが、実態は圧倒的な体格を活かし2強(アメリカ、カナダ)超えを目論むオーストラリア、スキルの高いNCAA経験者を多数擁し日本が未だ勝利したことのないイラコイ、2002年に日本に敗れて以来対抗意識を燃やしてくる開催国イングランドを乗り越える必要があり、極めてハードルの高い目標でもある。
この目標を達成すべく現在オフェンス、ディフェンスともに得点機会を増やすための取組みをしているが、それらの対戦国の圧倒的な攻撃、体格を活かした強烈なシュートを防ぎ、ボールを奪い、より日本の得点機会を増やすためにはゴーリーの活躍なくして“世界3位”の目標達成はありえない。特に今回の合宿では、シュート練習におけるゴーリー3人(#1篠原、#2佐々木、#30中井)のビデオを様々な角度から撮影、3人のフォームの特徴を分析、問題点を洗い出し、各自がより良いものを作り出す作業を行った。
どのような球技であっても、ゴーリーというポジションはシューターが放つボールに対して反応し、ボールがゴールに入るのを防ぐ(=セーブする)ポジション。
攻撃の選手は能動的に自分のプレーを選択することが出来るし、守備の選手であっても能動的にチェックやポジショニングで相手をコントロールすることが出来る。一方でゴーリーは相手が放つボールに受動的に対応することが求められ、コンマ1秒の自分自身の動きの差で失点を防げる場合と、失点1になる場合とが明確な差となって現れる(特にセーブの中でもキャッチングは自分達のポゼッション(=得点機会)を確実に獲得出来る守備においても最も重要な方法の一つ。最終的にはセーブの中でもどれだけキャッチングの比率を伸ばすことが重要)。
受動的な対応であるがゆえに、コンマ1秒の細かい動きの質や精度を高めることが求められ、今回の合宿ではビデオによる各人のフォーム分析を通じて以下のようなポイントを議論した。大学1年生で教わるような基本的なことも多いが、分析作業を通じて議論にあがったセーブについての論点は以下の通り。
1.スティックの握り方:
上の手(右利きであれば右手)、下の手(右利きであれば左手)の握り方。どのコースのシュートに対しても動かせる
握り方を意識すること
2.スティックの出し方:
直球シュート、バウンドシュート、右側に来るシュート、左側に来るシュート、どのようにスティックを出すことが、
最短距離でシュートを防ぐことに繋がるかを考えること
3.スタンスの作り方:
足の開き方、体重の乗せ方、構えるタイミング。各自が一番動きやすいスタンスを自ら作り上げること
4.ポジショニングの取り方:
ゴールラインを直径とする半円の外に立つのか、中に立つのか。角度の薄いところでどのようなポジショニングが、
シューターに一番プレッシャーをかけることが出来るか。
などについて各自の考えを出し合った。ゴーリーを中心として撮影された画面を観ていると、各自の良い部分、改善していく部分がより明確になる。ここを改善したらよりボールをよく見ることが出来るのではないか、よりキャッチングの質が高まるのではないか、など細かい部分まで議論を重ねた時間は非常に有意義であり、本大会までの残り3ヶ月間という短い期間であっても更に伸びる可能性を感じた。
このような機会を通じて、各自が自分にあったスタイルを築いていく、日本代表ゴーリーの一人ひとりのプレースタイル、今後の成長に是非とも注目頂きたい。(特に学生選手の方には自分のプレーを自分の目で観るために、ビデオを撮影して分析することをお奨めします。)現在の私自身がラクロスを続ける最も大きいモチベーションになっているのは、前回2006年大会のイラコイ戦の敗戦。
(2006年W杯イラコイ戦レポートはこちら)
当時の大久保HCのレポートにもあるように、3Qまで3点差でリード、4Qも開始と同時に1点を追加し4点差、「対イラコイ初勝利」との思いが広がった矢先、相手の怒涛の攻撃を防ぎきれず7分間で5失点。3Qまで自分の当時持てるベストパフォーマンスを出せていたものの、相手エースの世界レベルのミドルシュートの前に連続失点、日本代表はそのまま逆転負けを喫した。自分のやってきたことを本大会の重要なゲームで出すことが出来た充実感がある一方で、最も重要な局面で、最後まで踏ん張りきれなかったことは今でも思い出され、世界トップレベルのシューターとの歴然とした力の差を実感することとなった。世界は4年に一度の世界大会を通じて、各国のラクロスに対する4年間の取組みを評価する。日本代表は言うまでもなく日本のラクロスの頂点としての組織であり、世界各国は日本のラクロスに対する取組みを日本代表のパフォーマンスを通じて知ることになる。オフェンスからディフェンス、ゴーリーまで日本のラクロスを形として表現し尽くした先に“世界3位”という目標達成があるのだと思う。この目標を達成する過程の中で、私自身も世界大会でのパフォーマンスを通じて、日本のゴーリーの力を世界に示していきたい。
3月22日(月)合宿3日目レポート レポート執筆者: 木村遼
・背番号:#25
・ポジション:DF
・学年:社会人1年
・所属:Stealers
・出身大学:早稲田大学
・勤務先:トヨタ自動車株式会社
・代表歴:2007年U21日本代表・得意なプレー:グランドボール
・注目してもらいたい点:攻撃機会を増やすための「奪う」プレー
・ご覧の皆様へ一言:
ワールドカップに向けて一同気合い十分です!「代表の試合ってやっぱりスゴイ!カッコイイ!」
そう思ってもらえるプレーをお見せできるよう日々精進してまいります。応援よろしくお願い致します!!<今回の練習メニュー>
・アップ
・ポジション別トレーニング
・ゴール前ピックカット
・ハーフフィールドディフェンス
・ポジション別練習(DFはクロスワーク練習⇒距離を近くしてのラインドリル)
・大学チームとのスクリメッジ(茨城大学・淑徳大学合同チームと20分×3Q)
・フィジカルトレーニング今回は、まだまだ、まだまだ代表内で影が薄い木村遼が練習レポートを担当させていただきます。日本代表の取り組みと、練習を通して私自身が感じたことや、代表に入って変わったことなどを伝えられるように書こうと思います。
W杯に向けて2泊3日で招集された強化合宿。最終日の練習が行われた。
皆疲れがたまってはいるが、本大会での連戦を想定しアップから気合が入る。本大会では疲れも大きな敵となるため、今日のように疲労が蓄積した中でのプレーに慣れておく必要がある。
今回の練習会は合宿ということで、毎日、体重・体脂肪・BMI測定が実施された。ベストパフォーマンスを発揮するための身体づくりの一環で、プレーヤーは日々食生活に気を付けている。が、一人暮らし一年目の私には、今回のバイキング形式の食事が魅力的すぎて、くしくも合宿中に体重が増えてしまった。自己管理を徹底することは世界で戦う必須条件。節制の日々をまた始めたい。
ポジション別トレーニング)
外国人選手は、言うまでもなく日本人よりも体が大きく、まともにコンタクトすれば劣勢になる。しかし、個々の能力をフルに発揮できれば日本人でも十分に戦うことができる。そのためのトレーニングとして、腰の切り返しや、体幹を固めてパワーポジションをとり続けるなど、体の大きな相手に負けない技術を学んだ。ディフェンス選手としては背が低い私にとっては、大変重要なトレーニングだと感じた。
学生時代は体を大きくすることに力を注いでトレーニングしていたが、世界と戦うことを想定し、思い通りに動かすことができる身体づくりも意識している。ハーフフィールドディフェンス)
現在、日本代表が取り組んでいるハーフフィールドディフェンスは、いわゆるマンツーマンでもゾーンでもなく、その中間のようなスタイルである。私を含め多くのプレーヤーにとって、過去に経験したことのない戦術である。戸惑うことが多く、なかなか共通理解ができずにいたが、今回の練習・ミーティングでは進歩を感じた。
DFはマークマンを決め、相手に仕事をさせないように守るという1対1のイメージが強いかもしれない。実際、私はラクロスを始めた当初、DFとして1対1だけ強ければ十分だと思っていた。しかし、日本が目指すスタイルは、DF同士の距離やスペースをより強く意識し、複数人のユニットを形成してボールを奪うというものである。また、守るという意識だけでなく、相手がバランスを崩したところを狙ったり、敢えて攻めさせてボールを奪うといったように、常に「奪う」ことを意識したシステムになっている。
守るだけでは得点機会は生まれない。DF機会をいかにOF機会に繋げるかが最重要課題だ。少々リスクを冒してもボールを奪うアクションを起こし攻撃に繋げることが、目標である世界3位へのポイントとなる。
私は早稲田でもStealersでもボトムでプレーしていたが、代表ではLMFとしてプレーしている。慣れないことも多いが、ボトムの経験を活かして、ボトム視点でLMFやMFに要求するプレーというのを常に考えている。ロングスティックとショートスティックが連携を取り、ゴーリーを含めた7人がユニットとして動けるのが理想だ。LMFとしてはまだ至らないことも多いが、今までもアドバイスされた点を改善することで成長してきた。
ミスは上手くなるチャンスと捉え、ミスを恐れず地道に努力しようと思う。ポジション別練習/DFはスティックワーク)
距離を近くしてのラインドリルでキャッチしてから、素早く小さいモーションで投げる技術の練習を行なった。また、敢えて逆ボックスに投げるパターンやグランドボールからパスするパターンも練習した。
DF局面でボールを奪い素早くスムーズにOFに繋げる日本の戦術では、ロングスティックの攻撃参加は必須項目となっている。ロングスティックは広いスペースでボールを受けたりパスレンジが長くなったりしがちだが、相手にDFさせずに攻めるというコンセプトに於いてはより短いパスレンジ、狭いスペースでのプレーが要求される。スクリメッジ)
今回も、ディフェンスエリアでのアウトオブバウンズは全て相手ボールとなり、オフェンスエリアでのシュートチェイスやアウトオブバウンズも全て相手ボールという特別ルールで行われた。
スクリメッジでは私はボールに多く絡むことを意識したが、まだミスが多く奪える場面で奪えなかったり、ファールで流れを悪くしてしまう場面があった。
「良い準備をしてプレーすることが重要。後手に回ったら勝負にならない。」「迷いがあったら勝てない。絶対的な自信があれば、日本の優位性を保ち勝つことができる!」と、大久保HCは試合後に話をした。絶対的な自信を手に入れ自分自身が納得いくプレーをするために、悔いのない準備をしたい。練習・試合以外でも普段の生活から日本代表の自覚を持ち、7月の本大会に備えようと思う。
Text:男子日本代表・及川卓/篠原貴彦/木村遼
Photo:日本ラクロス協会広報部「.Relax」編集部・大木佳奈