2004年12月25日(土)・26日(日) 第8回練習会 於:東京・大井ふ頭中央海浜公園第2球技場12月26日(日) 男子コーチチームとのスクリメッジ 二日目。女子日本代表チームは未経験のショックを受けることになる。
9時にグラウンドインした選手達。11時半からのスクリメッジまで、昨日よりはゆっくり確認することができる。スパイダーを張った時のボールキャリア(BC)の状況の見極めと判断について、丁寧に復習した。何がOKで、相手にやらせてはいけないことは何なのか、全員が共通認識を持っていなければならないのだ。
10時過ぎ、本日の対戦相手である男子コーチチームが、ウォーミングアップ開始。かなりの気合いの入り様で、カナディアン1000本!と息巻いている。
男子コーチチームとは、外国人の体格/スピード/当たり/スティックワークなどを想定して男子チームと試合をするという目的のもと、女子チームを指導している男子ラクロス出身のコーチ達を集めて結成されたチームである。女子のルールを理解していて女子用スティックが扱えることが、女子チームをコーチしている男子コーチ達を集めた最大の理由だ。
これが、そうそうたる顔ぶれなのである・・・。女子日本代表前HCの大久保氏、男子ラクロス界のスーパースター丸山氏、ラクロス協会事務局のお兄さんこと遠藤氏に始まり、他にも名の知れた面々が。このような機会がなければまず見ることが出来ない、スペシャルチームだ!リーグ戦で相手チームのベンチで吠えていた人が、この写真の中にいるかも。
(1) 男子コーチチームとのスクリメッジ いよいよ、この二日間での目玉とも言えるゲームのスタートだ。男子プレイヤーが女子のスティックを持ち、センターでスティックを合わせてドローをするという、見慣れないシチュエーションでゲームは始まった。
開始早々、小林絹枝(キム)がシュートを放つが、男子チームのゴーリーに阻まれる。4分にカットインからアシストシュートを決められると、流れは一気に男子チームに。セットプレーが主流の男子ラクロス出身である男子コーチ陣は、ゴール前での緩急のつけかたやピックの入り方が上手で、風のようにカットインしては女子日本代表ゴールに襲いかかってくる。国内の女子ラクロスではほとんどない位置からのミドルシュートや、ビハインドシュートにも戸惑っている様子が伝わってきた。
長身のディフェンスにぴったりと張り付かれ、長岡良江(ヨシエ)がパスを出すのに十分な視野と間合いが得られない。ちなみにこのディフェンダー:助川氏の身長は190cmを超える。
関西選抜コーチである伊藤氏のビハインドシュート。女子相手であろうと容赦はしない。国内女子ではあまり見られないが、一歩海外へ出ればこのようなシュートを放つ選手はめずらしくないのだろう。
チャンスを確実に決めてくる男子チームに対し、女子日本代表はシュート数すらこれまでのスクリメッジに比べて少ない。ありえない所からのスティックによるプレッシャーで、いつもはしないパスキャッチミスを連発する。前半は1-4と3点ビハインドで折り返した。
ハーフタイム、ロッカールームは久しぶりと言ってもいいような重い空気が流れていた。前半を振り返り、悔しそうに一点を見つめている選手が多い。心中は「出来るはずなのに」なのか、それとも「歯が立たない」なのか・・・。
そんな選手達にコーチ陣が指示を送る。
高田静江(シズエ)HC、「男子の速いペース、早い反応につられて自分達を見失ってるよ。流れをかえようと入れた交代選手も、皆前の人と同じことをしてる。自分の役割を考えて入りなさい。ボールは100万円なんだから。絶対放すな!」
佐藤壮(タケシ)AC、「こちらの速攻は通用してるけど積極性が足りない。性別が変わっても同じラクロスなんだから、崩れるパターンだって同じはずだ。どんどん仕掛けて失敗していい。」
石渡素子(モトコ)AC、「ゴール前、ファウルをもらうつもりでどんどん突っ込んでいってみな!当たってみよう。このせっかくの機会を生かそう。」後半になって少し落ち着きを取り戻し、早いうちに2点を返す。
それでも中盤の運びはかなり厳しい。塙妙子(タエコ)が苦し紛れに出したパスは難なく助川氏のスティックへ。奥で余裕の笑みを浮かべる丸山氏・・・。
スパイダーを破られ、パスが繋がれてしまう。
ゲームも終盤に差し掛かり男子チームに疲れが見え、走れなくなる選手やミスが起こりはじめたことによって、45分過ぎから女子日本代表に再三チャンスが訪れる。しかし撃つシュートが一向に決まらない。
シュートを放つ山田幸代(サチ)。2005年関西学生リーグ戦で合計ゴール数53を叩き出した圧倒的な得点力は通用するか?
結局、その後ゲーム終了までの15分間女子日本代表にゴールはならなかった。対して男子チームは、疲労しつつもコンスタントに得点を重ね、3-8で試合は終了した。
すぐにクールダウンとアイシングをし、ミーティングが行われたが、二日間で30分ハーフの試合を3つこなした選手達は身体的な疲労はもちろんのこと、仮想外国人とみなした男子コーチチーム相手に大差で負けたことから来る精神的疲れも大きいようだった。しかも6月の国際親善試合でUS WEST相手に引き分けという結果が最低スコアだった2004年女子日本代表にとって、今日が活動以来初めての黒星なのだ。皆神妙な顔で椅子に腰を掛けた。
男子コーチチームに加わっていた石川貴一(タカイチ)ACが戻ってきて、男子コーチ陣からのコメントを攻めと守りに分けて選手達に伝えた。そして、「男子コーチとやって受けたカルチャーショックから、何かを学んでほしい。何か発見はあった?」と選手達に訪ねた。
濱田亜衣子(ルイ)、「男子は玉離れが早い。そしてどんな状況でもスティックをあやつることが出来る筋力やボディーバランスがあった。」
塙妙子(タエコ)、「ラクにプレーできていて、力の抜き入れが上手い。」
山田幸代(サチ)、「どこかわからん所からチェックが入った。」
長岡良江(ヨシエ)、「代表は無駄に動き過ぎていた。」
小林絹枝(キム)、「私達は、有利であってもあえて裏へボールを落とす、とういような、自分達のペースに持っていくことが出来なかった。」コーチ陣は、選手達よりも落ち着いていた。
石渡素子(モトコ)ACが「日本は“速く早い”のを売りにしているけど、外国人も速いんだからね。ショックを感じたままじゃなくて、それを消化してクリアーにする訓練が必要。今日対戦した相手、あれがカナダ人、イギリス人なんだから。」と確かめるように言った。
馬淵博行は覚悟を決めたかのような目で選手達に話した。「年末年始、結構キツイと思います。走ります。年末年始合宿の始まる30日までに体調を整えるように。怪我が恐いからスキーなどのWinter Sportsも控えること。」
2004年女子日本代表活動の総括、且つ2005年の行方を占う「年末年始合宿 IN 御殿場」は1週間後。世界大会で選手/スタッフを含めたこの「チーム」が7日間戦い抜けるか否かをシミュレーションするための合宿であり、トレーニングとなる。いかなる状況が待ち受けているのか、想像もできない部分もあるが、自分達がどこまで出来るのかを確かめに行きたい。
Photo & Report by 女子日本代表サポートマネージャー・橋本薫