2004年11月27日(土)・28日(日) 関西遠征 於:大阪・舞洲運動広場(11月27日)
大阪・鶴見緑地運動場(11月28日)2004年女子日本代表にとって初めての遠征である、関西遠征がやってきた。
この遠征は、公開練習、クリニック、試合、オークションなどを通じて関西・中四国地区のラクロスプレーヤー達と女子日本代表チームが交流を図り、女子日本代表の活動をPRするための2日間となる。11月28日(日)
朝9時。続々と集まってくる関西・中四国プレーヤーを中心とした観客達。
受付に用意した日本代表メンバー紹介のチラシ200枚があっという間に足りなくなるほどの入りである。事前の申し込みを大幅に上回る、407名が来場!!
一列に収まり切らず、立ち見続出で運営スタッフも嬉しい悲鳴。
本当にありがとうございました。・・・そんな中、日本代表選手達は様々な思いでウォーミングアップをこなしていたはずだ。
実は朝、高田静江(シズエ)HCより、現時点でのベスト16のメンバーが発表されていたのである。
国際ルールに準じて30分ハーフで行われる中四国選抜戦、関西選抜戦の2試合を、本大会での実際の序盤の対戦スケジュール
―――1日目(対チェコ・前回大会不参加)・2日目(対ドイツ・前回大会8位)―――
と仮定して、メンバーを組んでシミュレーションをするのが今日の目的だからだ。
この発表が、選手の精神やパフォーマンスにどう影響してくるのか、興味深いところである。第1試合: vs 中四国選抜チーム 開始1分、長岡良江(ヨシエ)のゴールで日本代表先制。
ほとんどの時間が日本代表のボールポゼッション。
フリーショットや裏からのアシストシュートなどで次々に点を重ねて行く。
5回目のドローで中四国選抜がようやくマイボールにするも、すぐさま奪い返す。和田亜紀子(ドン)はこの試合、前半だけで5得点、トータル8得点と大活躍。
彼女や山田幸代(サチ)のパスワーク、佐々木梓(アズ)のスピードにも、観客がひときわ沸いていた。
地元関西ではあこがれの的であるこの3名、日本代表での存在感も関西プレーヤー達にしっかりとアピールしていた。12-0と大量リードで迎えたハーフタイムだが、高田静江(シズエ)HCは選手達に諭すように語る。 「今日、本当に沢山のお客さんが見に来てくれているよね。でも、世界大会ではあんなに沢山日本の観客は来てくれないよ。そういう“超AWAY”の中、自分達の集中力がどこまで保てるかが勝負なんだよ。例えばシュート率。最初の5分間は100%だったのに、今だんだん落ちてきているでしょう。ディフェンスの寄りも遅くなってる。もっと早く。間に合わないならそれなりにボールマンが何をしようとしているか判断して、その場その場で次の対応への声を早くしていかないと。」
飯塚佳代(カヨ)からは、
「やたらと得点を稼ぐよりも、今は“どうやって点を取ったのか”が大事じゃない?せっかくカナディアンをあんなにやっているんだから、カナディアンの形を作っていこう。」。
又、小林絹江(キム)からは、
「比較的1対1を仕掛けやすいけれど、むやみに仕掛けるのではなく、一つ一つの1対1に目的をもってやろうよ。“崩し”の1対1なのか、“攻め”の1対1なのかハッキリさせよう。」
と、ベテランならではの腰の据わった意見でチームを引き締めた。そして、ディフェンスの最終ラインを守る佐久間朋子(トモコ)からは、
「攻めている時にオフェンスの位置取りが片寄っているので、そのあとスパイダーを仕掛ける時の配置が遅い。攻めてる時からディフェンスの意識を持とう。」
との意見が。佐藤壮(タケシ)ACは、
「前半これだけこてんぱんにやられた相手が、後半どう変化してくると思う?その変わり方を良く見て、さらに楽しもう。」
と、独自の視点から選手達に新たな見方を促した。後半、ハーフタイムの提案が生きて、攻め方こそ丁寧になったものの、得点ペースはそれほど変わらない。日本代表は、中四国選抜ディフェンスの裏を上手く取り、ゴールを決めていく。途中1点与えてしまったが、21-1の大差で日本代表が勝利した。
もちろん、大事なのは点差ではない。1日目の試合内容を2日目でどう生かすかが世界大会では重要だ。第2試合: vs 関西選抜チーム 世界大会での2日目のドイツ戦を意識した布陣で臨んだ日本代表だが、序盤思わぬ苦戦を強いられる。関西選抜のタイトなディフェンスによってパスが落ち付かず、なかなか自分達のペースに持ち込めないうちに、先制点、2点目と相次いで関西選抜に得点を許す。
中盤の運びとボールコントロールに携わる澤田彩(ナナ)。
関西選抜との試合では、上45度の当たりがややきつく、ボールキープに苦心気味。ライド時、スパイダーを仕掛けるが、アグレッシブに狙っていないのと、関西選抜のクリアの玉離れが早いのとで後手に回るパターンが多く見られる。
攻めている時は最前線に位置するアタックが、スパイダー時にはプレッシャーの1列目となる。
ボールに飛び付いて行く泉水嘉織(チェーン)。
後ろからはWディフェンス要員の塙妙子(タエコ)も援護に向かっている。パス回しでゴーリーを引き出し、濱田亜衣子(ルイ)が無人のゴールに得点して反撃を開始。個人技術で練習してきた、“中にディフェンスを引きつけて外に勝負をかける”1対1で追い上げるも、前半終わって6-4と、油断できないスコアにハーフタイムでの選手達の表情も強張っている。
高田静江(シズエ)HCは、「我慢だよ」と、この状態を冷静に乗りきる事を強調。佐藤壮(タケシ)ACも、「敵の状態を落ち付いて良く見て後半戦え」と、表現は違うが共通した趣旨の指示を出す。
そして後半、塙妙子(タエコ)のスピードを生かした45m独走シュートを皮切りに、ようやく少し持ち直してきた日本代表。高田静江(シズエ)HCから、「余計な事はするな!上手く行ったら、もう1度同じパターンで攻めろ!」と激が飛ぶ。相手のクリアのリズムが読めてきたのか、スパイダーも前半よりは成功するようになってきた。終わってみれば15-7での勝利であったが、課題は残る内容となった。
午前中に試合を全て終了し、13時からのクリニックに備えて、選手達はダウン、アイシング、軽食を取り、しばし準備と休憩の時間となった。
が、ここで嬉しいハプニング!!一旦グラウンドから引き揚げようとする選手達に、見学者が数名、「サイン下さ〜い」と駆け寄って来たのだ!手には購入してくれたばかりの女子日本代表オリジナルTシャツが。選手達はビックリしつつも笑顔でリクエストに応え、会話を交わしながらメッセージなども書き込んでいた。
川辺美穂子(アキラ)キャプテンも「ホントこういうの嬉しいよねー!」とさわやかにサイン。
きっとラクロスが上手くなる!ちょっとしたコレクションと化しています。
ちなみにTシャツは大好評、売上は長袖・半袖合わせて2日間で57枚に上り、年内完売の可能性が高くなってきた。
クリニック 来てくれた方達の中にはこれを一番の楽しみにしていた人も多かったであろう、クリニックの時間がやってきた。
ゴーリー・フィールド・コーチ・SG(SafetyGuard)に分かれ、それぞれ日本代表選手とスタッフから生の指導を受ける。参加費は特に決められておらず、それぞれの満足度に応じて、最後に支払うシステム。数少ない日本代表チームとの触れ合いを楽しみに参加してくれた人達に喜んで帰ってもらうためにもレベルの低いクリニックをやるわけにはいかない。
関西スタッフの方々が張ってくださった「がんばれ日本代表」バナーの前で、一人一人ポジションや名前などを自己紹介。もちろん全員JAPAN Tシャツ着用!
(1) ウォーミングアップ
馬渕博行(マブ)TR、早川亜希(アキ)STRの説明を受けながらウォーミングアップ。まずは全員でグラウンドを走って体を温める。参加者225名が一斉にグラウンドをぐるぐる回る様は大迫力。走った後は2人組でパートナーストレッチ。馬渕博行(マブ)が拡声器で、「単に伸ばすだけではなくて、自分はここが伸びているんだな、相手はどこが伸びているのかな、と感じる、これが重要」と説明。
次はそのまま2人組で、「パワーポジション」を意識したアップメニュー。
「パワーポジション」について説明する馬渕博行(マブ)TR。
「パワーポジション」についてはこれまでの活動レポートに詳しく載っています。2人組で体をぶつけあう。
つま先と足の向きが揃っているか?母指臼に体重が乗っているか?を意識しながら・・・。
もちろん日本代表選手も混じって参加。写真右は大迫美季(ミキティー)その後、4箇所に分かれて技術練、戦術練に入った。説明はコーチ陣が行ない、練習中は選手達が廻り、時には混ざったりしながら、アドバイスしていった。
(2) クレードル
トップハンドは手のひら全体で握るのではなく、指の部分で持ち、手首を柔らかく保つ。しっかり握る時はディフェンスに付かれた時や、ディフェンスを抜く時で、それ以外の時はいつでもシュートやパスのフォームに入れるよう、楽な体勢でいることがポイント。(3) パス&キャッチ
パスはクロスのヘッドとエンドをしっかりとパスを出したい相手に向かって振る。最後にトップハンドの手首のスナップを意識するようにする。
キャッチは顔の横で行なう。よく「引いて取れ」と言われるが、むやみに引こう引こうと思う必要はない。「ボールの勢いを吸収しよう」という気持ちでキャッチすること。(4) シュート
キーワードは「ゴーリーとの時間と空間の奪い合い」。自分のタイミングやスピードにこだわったりと、どうしても「自分」を主語にしがちなシュートだが、ゴーリーの状態を見る(どこが空いているか?目線はどこか?など)、ゴーリーのセーブしたいタイミングとずらす(フェイクを入れる)など、ゴーリーを主語にして考えながらシュートを打てば、パワーやスピードがなくてもシュートは決まる。型にはまったシュート方法にとらわれず、楽しみながら色々なパターンを増やしてみよう。
(5) ディフェンス
アップでやった「パワーポジション」を意識して行なった。詳しくは過去の活動レポートに載っているので、参考にしてみて下さい。
高田静江(シズエ)HC自らレクチャー。貴重な機会である。
コーチ陣の熱心さは参加者達に伝わったようで、楽しみながらも真剣に取り組んでいた。
後ろでは熱心にメモを取っている方も。ビデオ撮影をしているチームもあった。(6) カナディアン
時間的優位、空間的優位を活かしたドリル形式の攻撃練習。この練習、最初は効率も悪く、たどたどしく攻めていた参加者達が、代表コーチ陣の指導、混ざった代表選手達のアドバイスによって、ぐんぐんと上達していく様子は目を見張るほどだった。詳しい説明についてはこちらも過去の活動レポートを参照してみて下さい。(7) ゴーリー
ゴーリーは4〜5人1組で、各ゴールをローテーションしながら、石川貴一(タカイチ)AC、西村麻希(マキ)・豊田亜友子(トヨ)両ゴーリーからクリニックを受けていた。親しみやすい雰囲気でゴーリー陣にアドバイスする西村麻希(マキ)。
「“打たれる”ではなく“打たせて捕る”、攻撃的なゴーリーになろう!」を合言葉に、良いシュートを打たせない、シューターに打つコースが無いと思わせる、そのために必要なポジショニング/間合いなどを説明し、ゴールの裏でリアルタイムでアドバイスを与えていた。(8) SafetyGuard、マネージャー
現場によって刻々と変化する状況に応じた臨機応変な対応の仕方などを、村尾英里(エリ)MG、頃安悠子(コロ)SMGを中心に、グループを回りながら説明していた。普段はなかなかアドバイスを受ける場の少ないポジションなだけに、参加者達は特に熱心に耳を傾けていた。(9) クーリングダウン
最後は再びトレーナー陣の仕切りで、参加者も日本代表選手も皆一緒にクーリングダウン。気を効かせた馬渕博行(マブ)TRが、「気になる選手に話しかけてみて下さーい」と言うと、ジョギングをしながら日本代表選手と参加者が打ち解けて話す様子が多く見られた。
最後に参加者と日本代表チーム全員で記念撮影。
とても楽しく、有意義なクリニックとなった。チャリティーオークション 関西遠征最後となるお楽しみコーナー、それがオークションだ。日本代表全選手が愛用のラクロスグッズや洋服などを持ち寄り、自らプレゼンをして、購入希望者が入札、一番高値を付けた方に落札していく、文字通りのオークション。初めての試みなだけに、出品する側は皆そわそわ落ち付かない様子だ。しかし、「もし誰も買ってくれなかったらどうしよう・・・」そんな不安を裏切り、オークションは思った以上の大盛況となった! さすがはキャプテン、この日一番多く出品した川辺美穂子(アキラ)(写真左奥)。
かなり年季の入った手袋や、’97世界大会で着用の品など、レアグッズを大放出。ちなみにオークションの司会は、「しゃべりなら任せろ!」の2名、山田幸代(サチ)と佐藤壮(タケシ)ACが担当。
落札価格がどこまで上がるかはこの2人にかかっている!
初期価格は低めに設定、欲しい品があったら、挙手をして落札希望価格を言って行く。
関西という土地柄(?)、かなり熱くシビアな入札バトルが展開された。
佐久間朋子(トモコ)は、’01代表活動の時の思い出の品をエピソードと共に。
「あのゲータレードのCMに出てたのトモコだよ!」と佐藤HCが口添えすると、「えーーーっ!」という歓声と共にさらに何名か手が・・・。
和田亜紀子(ドン)(中央)はラクロスTシャツ他を出品したが、ファンと思われる数名の入札合戦により、落札価格はかなりの高額に!
落札者には品物と共に、出品した選手とのポラロイド2ショットサービス、サインサービスが付いてくるため、お目当ての選手がいる参加者にとっては譲れない戦いだ。
右の参加者は山田幸代(サチ)のウィンブレを落札。
小柄な彼女には少し大きめだが、嬉しそうな表情!オークションも大盛り上がりの内に終了し、関西遠征全てのイベントが幕を閉じた。参加者達には最後、会場を出て行く際にチャリティーボックスに思い思いの参加費を入れてもらった。参加者達と最後のコミュニケーションを楽しむ選手達も見られたが、日もすっかり暮れて撤収時間が迫り、互いに惜しみつつも現地で解散となった。
帰りの新幹線の中、関西スタッフの方から2日間の実績報告を受ける。藤井あけみ(トーイ)GMが「スゴーイ!!」と叫ぶ。2日間の参加者数、チャリティーオークションの参加費が共に予想を大きく越えた数字だったからだ。
女子日本代表チームがこの関西遠征で得たもの・・・。数え上げるとキリがないが、それは一言で言うならば「感謝の気持ち」だ。一般的なスポーツイベントでの参加人数や売上金として考えたわけではなく、純粋に今回の数字が「すごい」と思えたのは、関西ラクロスの方々からの予想以上の歓迎と、熱心さと、盛り上がりを肌で感じる事ができたからだろう。そしてその影にあった関西スタッフの方々の事前の告知や準備、当日の会場設営や受付、進行のご協力なくしては、このイベントの成功や私達が得る事の出来た貴重な経験や感動は有り得ない。
この2日間を通して、普段の私達の活動もまた、ラクロスに関わる全国の沢山の方々からの支えによって成り立っていることを改めて確認できたはずだ。自分達が楽しみ、目標を達成する為に日本代表活動をしている。これは間違ってはいない。しかし、それだけでは決して「世界4位」にはなれない。周りの様々な方達の想いを集結し、背負って世界と戦うのだ。
今後も機会があれば、関西に限らず様々な地域の方達と触れ合いたいと思います。今回、この素晴らしい機会を与えて下さった関西を始めとする関係者の方々、本当にありがとうございました。
Photo & Report by 女子日本代表サポートマネージャー・橋本薫