2024年9月27日(金)
【医科学委員会】アンチ・ドーピングコラム第1回
医科学委員会
8月11日パリオリンピックが閉幕しました。世界のトッププレーヤーたちの熱い戦いに見ているこちらも熱い気持ちになったり、感動を覚えたりしたのではないでしょうか。また、8月29日からはパラリンピックも開催されます。こちらでも熱い戦いが繰り広げられるでしょう。パリの次は2028年のロスオリンピックです。ロスオリンピックでは120年ぶりにラクロスが正式種目として採用されます。オリンピックの舞台でラクロスが行われるのが今から待ち遠しいですね。
スポーツではオリンピックやパラリンピック、ワールドカップなど様々な国際大会が実施されます。今年度ラクロスでもU20女子日本代表、男子BOXラクロス日本代表などが国際大会に出場します。そこに出場する選手は全員が平等な条件、クリーンな状態、公平さが求められます。平等な条件、クリーンな状態、公平な戦いであるからこそ見ているものは感動を覚えるし、熱くなれるのではないかと思います。このような前提が崩れてしまうとスポーツはつまらないもの、価値のないものになっていってしまいます。このような状況を防ぐためにドーピング検査というものがあります。国際大会に出場する選手は試合の時だけでなく、大会開催までの間も居場所情報などを報告し、いつ、どんな時でもドーピング検査を受ける義務があります。ドーピング検査を拒否したり、受けられなかった、陽性反応が出たなどの場合は選手資格がはく奪されたり、成績がはく奪されることになります。このような知識や情報を国際大会に出場する選手はあらかじめ知っておく必要があります。このようなドーピングやドーピング検査に関する講習を先日、アンチ・ドーピング部会のメンバーが各代表に実施しました。写真はその時のものです。
選手は自分がクリーンな存在であるということを証明する必要があります。そのためには自分が口に入れるものに細心の注意を払い、責任を持つ必要があります。皆さんの中には日ごろからサプリメントを利用したり、病気やケガをしたときに薬、漢方薬などを利用したりすることがあると思います。しかし、サプリメントや漢方薬などには100%安全と言えるものがなく、ドーピング検査で陽性反応が出てしまう可能性があります。また、服用するものだけでなく塗り薬や目薬などには禁止成分が含まれているものもあります。選手自身が気をつけていてもサポートスタッフや家族、関係者からもらったものなどから陽性反応が出ることもあります。その場合も選手自身の責任になるので周りの人たちも選手同様、細心の注意を払う必要があります。ラクロスは大学生から始める人がほとんどで、ある日、突然、日本代表や代表候補となることもあります。日本代表、代表候補になったからになったから急に生活を改めるのではなく、いつ呼ばれても大丈夫なように日ごろから口に入れるものには細心の注意を払うよう習慣づけておくことが重要だと考えます。
講習会で講師を務める藤本さん
では、サプリメントに頼りすぎない栄養摂取、薬や漢方薬などが必要な病気などにかからないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。それは、必要なエネルギー、栄養はできるだけ食べ物から摂取するということがその1つであると考えられます。まずは自分の1日に必要なエネルギー量がどのぐらいなのかを知る必要があります。そのうえで1日のどのタイミングでどのぐらいのエネルギーを摂取するのか(朝食で何kcal、昼食で何kcal、夕食で何kcal、補食で何kcal)を考えましょう。エネルギーは栄養素でいうと炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3つです。これらから得られるエネルギーのバランスのことをPFCバランスと言います。Pはプロテイン(たんぱく質)、Fはファット(脂質)、Cはカーボ(糖質)です。1日の摂取エネルギーのバランスがCは55~60%、Fは20~25%、Pは15~20%になるよう心がけることが大切です。たんぱく質は肉や魚、大豆や卵など、脂質は油やバター、乳製品など、糖質はご飯やパン、パスタなどに多く含まれています。しかし、これだけではエネルギーとして燃えてくれません。ビタミンやミネラルはエネルギーを燃やすための着火剤の役目やホルモンバランスを整えて身体の調子を整えたり、骨や歯の材料になったりします。そのためにはご飯や肉、魚だけではなく野菜や果物、海藻やきのこなどもバランスよく摂取する必要があります。
できるだけ食べ物から栄養を摂取することはクリーンなラクロスプレーヤーになることにつながります。それは自分自身の安心にもつながりますし、いつ代表に呼ばれても慌てなくても済むことにつながります。そのような状態を作るために今日から少しずつでよいので自分の口に入れるものには注意を払って生活するようにしていきましょう。
Text by 大西城太郎