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 U19男子日本日本代表

2010年男子日本代表・GW遠征レポート(2010年5月2日〜4日)
 
5月2日(日)遠征1日目レポート

本下純

 

レポート執筆者: 本下純

 ・背番号:#15
 ・ポジション:MF
 ・学年:4年
 ・所属:慶應義塾大学
 ・代表歴:2007年U21日本代表、2008年U19日本代表、2009年U22日本代表

 

【遠征スケジュール】
  5月2日(日)午後
   ・アップ
   ・スクリメッジ(中部大学、名城大学、信州大学、愛知学院大学、岐阜大学、名古屋大学と各20分×1Q)
 
 今回、我々日本代表はゴールデンウィークを使い3日間で名古屋、大阪、福岡を回り、各地区の大学と練習試合を行った。

 日本代表は社会人の選手が多く、普段は土日という限られた時間でしか揃って練習する事ができないため、朝から晩まで共に行動し、話しあえる遠征は非常に貴重な時間である。また今回の遠征では、実際の世界大会で連戦を戦いぬく力をつけるためにも、新幹線で移動しながら1日6Qの試合を3日間連続で行い、本番をよりイメージできるようになっている。

 他の選手が技術面で日本代表が意識している点などは書いてくれているので、私は違った角度から今回の遠征を通じて気付いた事を3点書きたいと思う。

  まず1点目に、1試合を通しての戦い方を大事にしなくてはならないということ。どういう事かというと、日本代表とはいえ全てのクォーターで大量得点できるわけではなく、特に世界大会に行き世界の強豪国と戦う際に1試合を通じ4Qを同じペースで得点を重ね続ける事は難しい。負けるクォーターでは我慢し小さく負け、勝てるクォーターで大きく勝てば良いのである。初日の名古屋でも序盤では体力もあり足を動かし得点を重ねていったが、後半になり疲れが見え始めてからも同じ戦い方を繰り返し、ミスが続いてしまい、得点が大幅に減っていってしまった。一つの試合の中でその時の流れに最適な戦い方を選び、試合終了の笛の際に相手より1点でも多く得点を取っていれば良いのである。こういった実際の世界大会での試合運びで意識するような事を、遠征で学生を相手に戦っている時から自分達で意識し練習の密度を高めて行く事が非常に大切である事を再認識した。

 そして、2点目に今書いたような試合の運び方などを選手が主体となり考え実行していかなくてはならないということである。ヘッドコーチに指示された事だけを正確にできるだけのチームでは、本大会で厳しい局面に立たされた時にもどこか人任せにしてしまうチームになってしまう。今回のようなハードスケジュールな遠征を通じて、疲れが見え始めた時にこそ、選手同士で話し合いチームをどうしていきたいのか考える必要がある。実際に現在チームでは活動を始めた時よりも、はるかに多くの時間をコーチ陣を抜いた選手間のみのミーティングに費やしている。

 そして最後に、今回の遠征を通じて多くの人と触れ合い、自分達がこの人々の代表となり、日本のラクロスとはこういったものだと世界に見せつけに行くのだと改めて実感した。日本でたくさんの人がラクロスをプレーしている中で、世界大会という舞台で表現できるのは我々だけであり、日本で応援してくれる多くの人達の分も強い気持ちを持って本大会に臨まなくてはいけないのだな、と感じた。

 
 
5月3日(祝・月)遠征2日目レポート

村松哲周

 

レポート執筆者: 村松哲周

 ・背番号:#20
 ・ポジション:DF、AT
 ・学年:社会人12年
 ・所属:VALENTIA
 ・出身大学:東海大学
 ・勤務先:株式会社ドーム
 ・代表歴:1998年/2002年/2006年日本代表

・得意なプレー:グランドボールからの素早いパスワーク
・注目してもらいたい点:グランドボールの処理、ロングスティックオフェンス
・ご覧の皆様に一言:
    皆さんの応援が我々に勇気を与えてくれます。
    力の限り頑張りますので引き続き応援よろしくお願い致します。
 
【遠征スケジュール】
  5月3日(祝・月)午前
   ・アップ
   ・スクリメッジ(関西地区選抜・関西大学・近畿大学・神戸大学・関西学院大学・関西ユースと各20分×1Q)
  5月3日(祝・月)午後
   ・代表コーチ、選手によるクリニック
 
  これまでのレポートは活動面にスポットを当てた内容でしたので、今回は違う角度で「日本代表であることのプレッシャー」をテーマにレポートをしたいと思います。

 遠征2日目、大阪会場。今回の遠征試合は各クォーターで対戦相手が変わります。また通常4Qのところ6Q行う為、2日目だけでも6チームと対戦しました。
  ちなみに本大会の2日目はイラコイ戦に相当します。当たり前ですが、「疲れた・・・」などとは言っていられません。過去4大会、一度も勝ったことのない相手であり、今回は絶対に勝たなければならない相手です。

 話を戻します。
 1Qは関西選抜と対戦しました。相手は非常に思い切りのよいプレーを連発しており、楽しそうにプレーしているのが印象的でした。一方代表は、いまいちリズムに乗れずに苦戦しました。結果は4-2で代表がリードしましたが、今回の遠征で一番の接戦でした。

  ここで、テーマである日本代表のプレッシャーについて触れたいと思います。
  普段の練習では良いプレーをする選手は多数います。しかしながら、負けられない試合、大事な試合、大勢の観客がいる試合、格上チームとの試合等、プレッシャーが掛かった状況においていつもの力を発揮できない選手が大勢います。一方でそういうときに安定したプレーあるいはいつも以上の力を発揮する選手もいます。
  何が分かれ目か・・・。ここで出てくるのがプレッシャー(重圧)です。今の日本代表選手について考えると、「いいプレーがしたい」、「コーチにアピールしたい」、「代表に残りたい」、「勝ちたい」、「なんとかしたい」という想いが先行します。そんな想いが強い人ほど「ミスできない」、「抜かれたらどうしよう」、「シュート外したら・・・」と考えてしまうのではないでしょうか。我々はそれを跳ね除けるだけのメンタリティーが求められています。本来、如何に強い気持ちを持って海外の選手と戦い、チームとして勝利するかが重要なのですが、どうしても日本代表に残りたい、いいプレーをしたいという気持ちが先行してしまいます。コーチ陣も不安を払拭するため、あまりミスは指摘しません。それよりもアクションを起こさなかったこと、強気になれなかったことを見ています。とはいえ代表としてワールドカップの舞台に立ちたいと思っても代表に残らなければ願いは叶いません。結局プレッシャーを感じてしまうのです。

  関西選抜の選手からは日本代表に勝ってやるという強い気持ちを感じました。一方で日本代表は「負けられない」、「いいプレーをしなければ」、「点を取らなければ・・・」等々のプレッシャーを持ちながらプレーした人が多かったかもしれません。これでいいのだろうかと「迷い」があったかもしれません。(あくまでも私見です)。常に自問自答しています。その差は結構大きいものです。
同じ人のプレーかと思うほど差がでます。フィールドに立つ上で、確固たる自信がないと特に海外での勝利は厳しいと感じています。その自信を植え付けるために練習しているし、日々の行動も重要だと思います。

 代表の練習においてもオフェンスフォーカス、ディフェンスフォーカスで行いますが、不思議なことにオフェンスフォーカスのときはDFが、ディフェンスフォーカスのときにはOFが上手く機能するのです。つまりフォーカスされてない方はある意味気軽にプレー、言い方は悪いが、プレッシャー(コーチの視線)なく思い切ったプレーができていると思います。「シュートを外した」、「パスミスした」、「キャッチミスした」といった過去の失敗や、「シュート外したら」、「スローミスしたら」「キャッチミスしたら」、「ゴール外したら」、「点を取られたら」、「今の動きでよかったのか」等々・・・将来(今後起こるプレー)の不安は全てプレッシャー、迷い、自信の無さから来ると感じています。

 どんなとき、どんなステージ(世界大会、国際親善、全日本選手権、リーグ戦、入れ替え戦、練習試合、毎日の練習)でも同じメンタリティーでプレーできる人が結果を残します。日本代表には結果が求められています。前進あるのみです。

  ここで個人的な話へ。
  私は、これまで1998年、2002年、2006年の3大会にアタックとして選出されてきました。ところが、今回はロングスティックでの選出です。約15年のラクロス人生で初のロングスティックです。「えっ、本当に、自分にできるのか」これが正直な感想です。当然にプレッシャーを感じます。自信を持つこともなかなか難しいです。本来ならこれまでの経験、知識、技術を還元するベテランにありながら、後輩のDF陣にいろいろ教えてもらう日々を送っています。後輩の注文に時には「カチン」とくることもあります。

 ロングスティックの経験が浅くても、見る人からしたらそんなの関係ありません。日本代表として見てきます。練習試合の対戦相手、本大会で対戦するチームもそうです。クラブチームでは流されるミスも代表では流せないミス。できて当たり前というプレッシャー・・・。4年に一度の世界大会・・・。同じメンバーと二度と出来ない・・・。
 いろんな想いがプレッシャーとなるのです。そんなプレッシャーを気にする人、気にしない人、気にするけど克服する人、結果オーライの人いろいろです。
  普段は許される言動でも代表では許されないケースがあります。全てのことが日本代表であり、周囲もそのように見て判断します。「そんなの関係ない」、は通用しません。当たり前だけとなかなか難しい。

 幸いなことに、3度の世界大会、アメリカのクラブチームでの1年間、クラブ選手権、全日本選手権、リーグ戦プレーオフ、数々の経験を積んでここにいますが、やっぱり4年に一度の世界大会には、プレッシャーを感じてしまいます。

 2006年イラコイ戦、日本の初勝利は目の前、4Q途中までリードするも怒涛のイラコイOF、逆転を許すもまだ1点差、反則をもらいマンナップオフェンス、同点に追いつくチャンス・・・。私はフィールドに立っていた。左サイドから単純に裏へパスするつもりが、DFにパスカット・・・。相手にやられたのではない、強い気持ちを待っていなかった自分に負けたのです、プレッシャーを感じてしまい、焦っていたのです。試合後、さすがに泣きました。みんなに申し訳ないことをした、4年に1回のチャンスを・・・。

 同じ過ちは繰り返さない。どんなことがあっても日本代表の誇りを持って世界と戦う。日本代表にメジャースポーツもマイナースポーツも関係ない。そんな決意で挑んでいます。今あるプレッシャーを強い気持ちで戦うためのパワーに変えて、自信を持って戦います。世界に日本のラクロスを見せつけます。

 現在、日本代表選手は30名です。最終的には23名に絞られます。誰が選ばれても結果を残せる、プレッシャーをものともしないメンバーです。とはいえ皆さんの応援が大きな力になることに変わりはありません。ラクロス日本代表の応援をよろしくお願いします。

 最後に、名古屋会場、大阪会場、福岡会場のスタッフのみなさん、観客のみなさん、選手のみなさん、いろいろとありがとうございました。おかげで素晴らしい遠征となりました。

関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
関西遠征関西遠征
 
 
5月4日(祝・火)遠征3日目レポート

 

レポート執筆者: 荻原史暁

 ・背番号:#11
 ・ポジション:MF
 ・学年:社会人3年
 ・所属:FALCONS
 ・出身大学:早稲田大学
 ・勤務先:大和住銀投信投資顧問株式会社
 ・代表歴:2005年U21日本代表

・得意なプレー:1対1。ミドルシュート
・注目してもらいたい点:現在練習中のピック、カットプレー。
・ご覧の皆様に一言:
   日本全国のラクロッサーの代表として、日本のラクロスの歴史を変えるべく精一杯頑張りますので、
   応援宜しくお願い致します!
 
【遠征スケジュール】
  5月4日(祝・火)午前
   ・アップ (ストレッチ中に部屋ごとで行われたミーティング内容の発表)
   ・エキストラマンオフェンスの簡単な確認
   ・スクリメッジ
     (九州選抜Aチーム20min×2Q、九州選抜Bチーム・BARBARIAN LIGHTS・広島修道大学・ESPERANZAと各20分×1Q)
  5月4日(祝・火)午後
   ・代表コーチ、選手によるクリニック
 
 遠征合宿最終日に出た主な課題は以下の通り。
   ・試合展開を考え、選手達でゲームコントロールをする(例えば、同じようなミスを繰り返して、
    自ら流れを悪くしないようにする等)
   ・ 早く的確な予測をすることで、良い意味の省エネで敵からボールを奪い、得点をする
   ・クリア時にショートMFが積極的にボールをもらいに行く(意図なくフラフラ上がり、ボールから離れない)

 細かい点を書き出したらきりがないため、勝手ながら最終日に出た主な課題ということで、以上3点に絞らせて頂いた。

 初日の名古屋で6クォーター、2日目の大阪で6クォーター、3日目の福岡で6クォーターと、非常にハードな3日間の合宿の最終日。上記3つの課題はいずれも大事ではあるが、この過酷な遠征合宿の意味を考えると、2つ目の課題がおそらく一番大事だと言えるだろう。

 「早く的確な予測をすることで、良い意味の省エネで敵からボールを奪い、得点をする」

 これこそが我々日本代表が目指すラクロスの姿。大久保HCも普段の練習から『予測』という言葉をよく使い、世界大会の連戦の戦い方を強調している。
  そこで当レポートでは、勝手ではあるが、個々の細かい課題に対して解説するのではなく、日本代表が強く意識しているこの『予測』という言葉について、以下少し考えてみることにしたい。

 『予測』

 一見、単純な一言であるが、この言葉の意味は非常に深い。この『予測』という行動は、日本代表で取り組んでいる全ての戦術、プレーの根底にある非常に重要な要素だと私は理解している。オフェンス、ディフェンス(ハーフフィールド、フルフィールド問わず)、ゲームコントロール等、ラクロスの全ての場面において、『予測』という行動は相手に勝つために必要不可欠となってくる。日本代表の活動(練習や試合)で出てくる課題も、多少強引かもしれないが、突き詰めていくと「敵より早く次に起こることを的確に予測することが大事だ」といった結論に至ることが多い。

 敵がミスしたボールに早く反応してボールを奪うこと(シュート、フィードミス、グランドボール等)、ボールを奪ってから早く速い攻撃に繋げること、敵が嫌がるようなスペースを奪うこと。

  一例ではあるが、これら日本代表が力を入れて取り組んでいるプレーを実践しようとする場合、何が一番大事で何を強く意識しなければならないか、それは『予測』という言葉に他ならないのではないかと私は考えている。フィールドスポーツにおける得点というのは、その多くがオフェンスがディフェンスの予測を困難にした場合に起こる。ラクロスも全く同様で、得点はもちろん、ボールの奪取、グランドボール、クリア等全ての場面において、敵に勝るためには敵よりも早く的確な『予測』が不可欠であるのだ。
  そして、我々日本代表が目指している良い意味の省エネラクロスを実現するためにもこの『早く的確な予測』という行動が非常に重要となってくる。
  敵よりも早く的確な予測をすることで、効果的にボールを奪い、効果的に得点に結びつける。
  早く的確な予測が効果的なプレーを生み、そういった積み重ねが省エネラクロスを実現させる。
 「無駄な動きで体力を消耗させるな」と大久保HCは強調する。

 現在セットプレーを多用しているのも効果的なスペースの奪い方、得点の仕方を身体に染み込ますため。全てはワールドカップの連戦を最後まで戦い抜くため。『予測』という言葉は我々日本代表の根底にあるのである。

 学生の頃の私もそうであったように、目の前の試合で結果を出そう思うと小手先の技術練習や戦術等に意識がとられ、
実際にこの『予測』という言葉の重要性を見失いがちになってしまう。私自身、技術的にも、この『予測』するということに関してもまだまだ半人前で偉そうなことを言えるレベルではないが、この日本代表の活動を通じて、『予測』という言葉の大切さに気付き(気付かせて頂き)、ラクロス観が変わったというのは紛れもない事実。
  人間は普段から全ての言動に対して予測という行動を無意識に行っているもので、「予測なんてしてるよ」「予測が大事なんて当たり前だろ」と言われてしまうかもしれない。しかし、騙されたと思って今一度『予測』という言葉の重要性についてじっくりと考え直してみて頂きたい。もしかしたら、『予測』という言葉が、私同様、みなさんのラクロス観を変えるきっかけになるかもしれない。
当レポートが皆様のラクロス上達の一助となれれば幸いである。

 最後に・・・、福岡で試合をして下さったチームはじめ、クリニックに参加して下さった選手、また色々な手配等して下さったスタッフの方々には心より感謝しております。皆様のご協力のもと充実した遠征合宿を良い形で締めくくることが出来ました。この場をお借りしまして深く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 

Text:男子日本代表・本下純
Text:男子日本代表・村松哲周
Text:男子日本代表・荻原史暁
Photo:日本ラクロス協会広報部関西次長・中山崇

 

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