これまでのレポートは活動面にスポットを当てた内容でしたので、今回は違う角度で「日本代表であることのプレッシャー」をテーマにレポートをしたいと思います。
遠征2日目、大阪会場。今回の遠征試合は各クォーターで対戦相手が変わります。また通常4Qのところ6Q行う為、2日目だけでも6チームと対戦しました。
ちなみに本大会の2日目はイラコイ戦に相当します。当たり前ですが、「疲れた・・・」などとは言っていられません。過去4大会、一度も勝ったことのない相手であり、今回は絶対に勝たなければならない相手です。
話を戻します。
1Qは関西選抜と対戦しました。相手は非常に思い切りのよいプレーを連発しており、楽しそうにプレーしているのが印象的でした。一方代表は、いまいちリズムに乗れずに苦戦しました。結果は4-2で代表がリードしましたが、今回の遠征で一番の接戦でした。
ここで、テーマである日本代表のプレッシャーについて触れたいと思います。
普段の練習では良いプレーをする選手は多数います。しかしながら、負けられない試合、大事な試合、大勢の観客がいる試合、格上チームとの試合等、プレッシャーが掛かった状況においていつもの力を発揮できない選手が大勢います。一方でそういうときに安定したプレーあるいはいつも以上の力を発揮する選手もいます。
何が分かれ目か・・・。ここで出てくるのがプレッシャー(重圧)です。今の日本代表選手について考えると、「いいプレーがしたい」、「コーチにアピールしたい」、「代表に残りたい」、「勝ちたい」、「なんとかしたい」という想いが先行します。そんな想いが強い人ほど「ミスできない」、「抜かれたらどうしよう」、「シュート外したら・・・」と考えてしまうのではないでしょうか。我々はそれを跳ね除けるだけのメンタリティーが求められています。本来、如何に強い気持ちを持って海外の選手と戦い、チームとして勝利するかが重要なのですが、どうしても日本代表に残りたい、いいプレーをしたいという気持ちが先行してしまいます。コーチ陣も不安を払拭するため、あまりミスは指摘しません。それよりもアクションを起こさなかったこと、強気になれなかったことを見ています。とはいえ代表としてワールドカップの舞台に立ちたいと思っても代表に残らなければ願いは叶いません。結局プレッシャーを感じてしまうのです。
関西選抜の選手からは日本代表に勝ってやるという強い気持ちを感じました。一方で日本代表は「負けられない」、「いいプレーをしなければ」、「点を取らなければ・・・」等々のプレッシャーを持ちながらプレーした人が多かったかもしれません。これでいいのだろうかと「迷い」があったかもしれません。(あくまでも私見です)。常に自問自答しています。その差は結構大きいものです。
同じ人のプレーかと思うほど差がでます。フィールドに立つ上で、確固たる自信がないと特に海外での勝利は厳しいと感じています。その自信を植え付けるために練習しているし、日々の行動も重要だと思います。
代表の練習においてもオフェンスフォーカス、ディフェンスフォーカスで行いますが、不思議なことにオフェンスフォーカスのときはDFが、ディフェンスフォーカスのときにはOFが上手く機能するのです。つまりフォーカスされてない方はある意味気軽にプレー、言い方は悪いが、プレッシャー(コーチの視線)なく思い切ったプレーができていると思います。「シュートを外した」、「パスミスした」、「キャッチミスした」といった過去の失敗や、「シュート外したら」、「スローミスしたら」「キャッチミスしたら」、「ゴール外したら」、「点を取られたら」、「今の動きでよかったのか」等々・・・将来(今後起こるプレー)の不安は全てプレッシャー、迷い、自信の無さから来ると感じています。
どんなとき、どんなステージ(世界大会、国際親善、全日本選手権、リーグ戦、入れ替え戦、練習試合、毎日の練習)でも同じメンタリティーでプレーできる人が結果を残します。日本代表には結果が求められています。前進あるのみです。
ここで個人的な話へ。
私は、これまで1998年、2002年、2006年の3大会にアタックとして選出されてきました。ところが、今回はロングスティックでの選出です。約15年のラクロス人生で初のロングスティックです。「えっ、本当に、自分にできるのか」これが正直な感想です。当然にプレッシャーを感じます。自信を持つこともなかなか難しいです。本来ならこれまでの経験、知識、技術を還元するベテランにありながら、後輩のDF陣にいろいろ教えてもらう日々を送っています。後輩の注文に時には「カチン」とくることもあります。
ロングスティックの経験が浅くても、見る人からしたらそんなの関係ありません。日本代表として見てきます。練習試合の対戦相手、本大会で対戦するチームもそうです。クラブチームでは流されるミスも代表では流せないミス。できて当たり前というプレッシャー・・・。4年に一度の世界大会・・・。同じメンバーと二度と出来ない・・・。
いろんな想いがプレッシャーとなるのです。そんなプレッシャーを気にする人、気にしない人、気にするけど克服する人、結果オーライの人いろいろです。
普段は許される言動でも代表では許されないケースがあります。全てのことが日本代表であり、周囲もそのように見て判断します。「そんなの関係ない」、は通用しません。当たり前だけとなかなか難しい。
幸いなことに、3度の世界大会、アメリカのクラブチームでの1年間、クラブ選手権、全日本選手権、リーグ戦プレーオフ、数々の経験を積んでここにいますが、やっぱり4年に一度の世界大会には、プレッシャーを感じてしまいます。
2006年イラコイ戦、日本の初勝利は目の前、4Q途中までリードするも怒涛のイラコイOF、逆転を許すもまだ1点差、反則をもらいマンナップオフェンス、同点に追いつくチャンス・・・。私はフィールドに立っていた。左サイドから単純に裏へパスするつもりが、DFにパスカット・・・。相手にやられたのではない、強い気持ちを待っていなかった自分に負けたのです、プレッシャーを感じてしまい、焦っていたのです。試合後、さすがに泣きました。みんなに申し訳ないことをした、4年に1回のチャンスを・・・。
同じ過ちは繰り返さない。どんなことがあっても日本代表の誇りを持って世界と戦う。日本代表にメジャースポーツもマイナースポーツも関係ない。そんな決意で挑んでいます。今あるプレッシャーを強い気持ちで戦うためのパワーに変えて、自信を持って戦います。世界に日本のラクロスを見せつけます。
現在、日本代表選手は30名です。最終的には23名に絞られます。誰が選ばれても結果を残せる、プレッシャーをものともしないメンバーです。とはいえ皆さんの応援が大きな力になることに変わりはありません。ラクロス日本代表の応援をよろしくお願いします。
最後に、名古屋会場、大阪会場、福岡会場のスタッフのみなさん、観客のみなさん、選手のみなさん、いろいろとありがとうございました。おかげで素晴らしい遠征となりました。