会場である東京・江戸川区臨海球技場の落ち葉が木枯らしによって舞い上がる中、2008年12月13日に関東学生2位の慶應義塾大学(以下、慶應)と全国クラブ2位のSibyllaが集った。
試合開始前、慶應の主将である#21河内由気選手は、「個人の強さを合わせたつながり、チーム力を見てもらえたら。」と試合の注目点を語り、Sibyllaの主将である#1金子麻紗子選手は、「金メダルを目指していますが、目の前の一戦に向けて集中して、まず1勝をつかみたい。」と意気込みを語ってくれた。
力強い掛け声で「結束」を掲げた白色のユニホームを着た慶應の猛者がグラウンドへ駆けていく。対して、一箇所に固まって静かに来るべき時を待つSibyllaの緑色のユニホームがグラウンドに映えた。
前半、即座に両者の闘志はぶつかり合う。ドロー後のグラウンドボールをSibyllaが獲り、仲間へパスをするも、慶應がインターセプトしパスが通るのを許さない。先にシュートを放ったのはSibylla。しかし、前半開始後すぐに2度シュートを放つも得点につなぐことができない。ボールを奪った慶應は、それをチャンスへと変えた。#56佐藤可奈選手が先制点となるシュートをセンターから華麗に決めたのだ。その後、Sibyllaによるファールが度重なり、流れが止まってしまった。Sibyllaはボールを握ることができない。そして、続くSibyllaのファールにより、ボールを得た慶應はパスを回すも、SibyllaのDF陣に阻まれボールをキープできなかったが、#33加藤瑤子選手がダウンボールをゴールに押し込み、得点を追加した。しかし、今度は慶應のファールが続いてしまい、自身の流れを掴みきることができない。Sibyllaはボールを運び、シュートは撃つものの得点にはならない時間が続いたが、#29渡邊奈緒選手が慶應ゴール左上から走りこんで力強いシュートを放ち、1得点目を獲得した。ドロー後の慶應のファールによりボールを得たSibyllaは、ボールをロングパスで運ぶも慶應にインターセプトを許し、思うようにボールをつなげない。そして、またもや慶應がインターセプトをしたところで前半終了となった。
後半もお互いの攻防戦が続く。後半開始3分が過ぎたところで、#34増田絵利選手の見事なアシストによって#14亀岡真美選手が2得点目を決めた。同点に追いついたSibyllaは果敢に慶應のゴールを攻めるが、最後の要であるゴーリーの#1大久保敦子選手に阻まれる。慶應も負けじとSibyllaのDF陣へ向かっていくも、シュートが得点に結びつかない。しかし、手堅くボールをキープしたままの慶應が、先ほど点を獲った#33加藤瑤子選手にボールを回すと、DFの鋭い目を掻い潜ってシュートを決めた。後半も残り15分を切り、Sibyllaがチームタイムアウトを要請し、最後の仕上げにかかる。Sibyllaの仲間がつないだパスを、#2山田愛選手がフェイクの利いたシュートで得点につなげた。続いて、山田選手のアシストで#29渡邊奈緒選手がSibyllaの4得点目のシュートを決めた。その後もSibyllaがボールをつなぐ時間が多かったが、さすがの慶應はSibyllaのファールにより得たチャンスを見逃さなかった。後半ラスト1分を切ったところで、#56佐藤可奈選手が同点となるシュートを放ち、ボールは見事にゴールネットに吸い込まれていった。最後はボールをSibyllaがキープして延長戦に入る。
湧き上がる観客席を背に、選手たちは静かにお互いの動きの再確認をしている。待ちきれない観客席では声援があちこちから聞こえた。延長戦開始。ボールを握ったのはSibylla。延長戦にざわめく中に慶應のファールを吹いたホイッスルが鳴り響く。早い展開でボールを回したSibyllaは、#34増田絵利選手がアシストし、#4清野桂子がシュートを放ち、ボールがゴールネットを揺らした。延長開始後1分が経過したところでの、ゴール前を上手く使ったプレーだった。あっさりと延長戦で点を獲られた慶應の選手たちは呆然と立ち尽くしていた。こうして、Sibyllaはサドンビクトリーを果たし、次の試合への切符を手に入れた。
試合後、Sibyllaの主将である#1金子麻紗子選手と延長戦で点を決めた#4清野桂子選手にインタビューをする機会を得た。
金子選手に今日の試合はどうだったかを尋ねたところ、難しい表情で「反省のみ。」という応えが返ってきた。しかし、今日の勝因を尋ねると、晴れやかな顔つきで「やったとき(試合中)の精神力が前より強くなった。」と応えてくれた。試合前に尋ねた、注目してほしい点はどこかという質問に対して、「#38田島理絵選手の走りとチームの一体感。」と応えてくれた点について活かせたかを尋ねたところ、「OK。」と一言。
決勝点を挙げた清野選手に感想を尋ねたところ、「次につながる大事な1点は、自分だけでなくチームでもぎとったものです。」と笑顔で語ってくれた。
最後に、次の試合への意気込みを両選手に尋ねると、金子選手は「チャレンジャーのつもりで。」と固い信念を見せ、清野選手は「日本一になるため、他のクラブチームのためにも頑張りたい。」と応えてくれた。是非大阪でSibyllaの笑顔という「Hibiscas」の花を咲かせてほしい。最後に、慶應、Sibylla双方の健闘を称えたい。 |