*「リエゾン(liaison)」とは、”来日するチームに帯同し、チームの連絡窓口及びお世話をするスタッフ”のことです。
本レポートは、リエゾンからの日次報告から抜粋したものです。
外からは見えない来日チームの様子が垣間見れます。
US West男子 2004年6月5日(土)
Report by 日本ラクロス協会国際部・森部高史国際親善試合前日。
全てのチームがゲームを2本行う日。今日はホテルからチェックアウトするために、荷物をすべて運び出しそれぞれのフィールドに向かわなければならない。道中そのような荷物を運ぶわけにも行かないので、ラクロス協会で2トントラックを用意。ホテルロビー集合は8時45分だが、少し早めに事務所を出て、7時30分にトラックで西葛西のホテルに到着。
「少し早すぎたかな」と思い、ロビーを見ると既に選手の姿がちらほら。既に朝食を食べ終わっている者、談笑しながら食事をしている者、これから食事をする者、様々でした。まだ荷物を積むのには早いので、選手と談笑内容は主に、今日の体調。
・「ちょっと疲れてる。今日は何試合だっけ?でも大丈夫。まだまだやれるよ」
・「確かに疲れているけど、君達スタッフのほうが疲れているんじゃないの?3試合あったけど俺ゴーリーだし。高史のほうが昨日はよっぽど走っていたよ(笑)」
など。「少し疲れている」というのは本音だと思います。何せ午前中に練習をして、3試合も昨日はしたわけですから。昨日の試合に関しては、とにかく「日本の選手は速い、そしてスキルがある。」ということを盛んに言っていました。そのような話をしていたら、気付くと選手が荷物の準備もして、揃い始めてきた。男子だけでもホテルのロビーは一杯なのに、今朝は女子もいることから、一時ロビーは他のお客さんが身動き取れないほどに。さすがに申し訳ないので、その場にいる人の荷物から積んでいくことに。
指示はフィリップ・コーチを通じてお願いをすることに。3日しか日本に来て過ぎていないけれど、コーチが声をかけるとすぐに集合し、きちんと話を聞く体制が出来るようになっていたのには、驚くと同時にどこか、嬉しさを感じずにはいられませんでした。
まずは荷物の少ない女子の荷物をトラックの左半分に置き、次に男子の物を。男子は防具もあるので、まずはラクロスとは関係のない物から順次積んでいくがその荷物の重いこと。3個ほど重ねるとそれ以上は重くて持ち上げられないと言った感じ。それでも次から次へと荷物が来るので、全て積めるか心配になるも、何とか目処がついて次は防具を積み込む。何とかギリギリ扉が閉まるところで全員の荷物積み込み終了。その後選手達は歩き、もしくは自費でタクシーに乗り江戸川陸上競技場へ。荷物を積んでいるときに、競技場に着いたら荷物降ろすから。と一言かけておいたのが功を奏し、トラックが着いた瞬間に選手達が玄関先に集合して、率先して防具をおろしてくれました。試合前で時間がないので、ラクロス以外の道具はこちら側で降ろすことを伝え、僕と遠藤で陸上競技場の端に移動。それが終わる頃には汗だくに。
第一試合は日本代表と対戦。先制点をあっさりと取るも、すぐに取り返され、逆転される。そんな中、選手がファウル(イリーガルボディーチェック)で1分間のペナルティー。その間に得点され、残りペナルティータイムが数十秒残っているにもかかわらず、その選手がフィールドに戻ろうとするので、戻れないことを伝えると、「あれ?!戻れるだろう?!1分のファウルは全部得点後に解除にはならないのか?!それは俺達がやっているのと違うルールだな。」と言っていましたが、審判の方に確認をしても「それは初耳だ、聞いたことがない」と言っていました。彼独自のルールのようです。
又、「身長差があるので、いつもと同じ感覚でボディチェックに行ってしまうと全部相手の顔に当たってしまうから気をつけよう。」とディフェンスの選手が声をかけていたのは印象的でした。
技術的、戦術的なことでは常にアドバンテージを取ることが出来ていたわけではないUS WEST。しかしながら、圧巻はその体格。国内リーグでは全くと言って良いほど見ることができない、フル代表の選手がボディコンタクトで吹っ飛ばされている光景に、オフィシャルに入っていた学生もただただ「おーっ!!」の声。前半が終了したところで、僕は女子のいる江戸川区臨海球技場に移動。
男子と再会したのは、午後に再び陸上競技場に戻ってきた後。東京選抜との2試合目はサドンデスで勝利したとのこと。おめでとうと伝えると、ありがとうと言いながらも「いったいお前はどこにいたんだ?お前は俺達と一緒にいるべきじゃないのか?女の尻ばっかり追い掛け回して」とからかわれてしまったので、「世の中そんなものさ」と言うと「そりゃそうだ」と納得されてしまいました。
夜は、江戸川区主催のレセプションパーティー。選手は正装に。やはり体格の良い人はスーツが似合う。その準備をしている最中に、「アメリカの大学でラクロスをしたいと思っている高校生はいないか?俺のチームにリクルートしたいんだ」とコーチに言われました。現状数校しかないことを伝えるも、「また後で話そう」とずいぶんと熱心でした。
レセプションパーティーにおいては、歓談中にホストファミリーが誰なのかがいち早く知りたいようで、「俺のホストはどこにいる?」と質問する選手が後を絶ちませんでした。又、会えた選手達は嬉しそうに自己紹介をしていました。ホストを引き受けてくれた日本の選手達も英語を話すことに不安を感じながらも笑顔。必死にコミュニケーションをとろうとしている姿には好感が持てました。この5日間は、どちらにとっても忘れられない日々になることでしょう。US WESTは、出し物として歌を披露。国際部US WEST男子担当スタッフである駒場も壇上に上げ、3人の選手がそれぞれ彼女に対する愛情を示す歌を披露していました。
選手達がホストと帰宅の途についている頃、各々の場所にいた3人のコーチ陣と話をする。コーチ陣が言う。「日本でラクロスが始まって17,8年と聞いたけど、それは本当なのか?たったそれだけの年月でこれだけのことをやってきたというのは本当に素晴らしいことだ。」ということと、「君達のようなスタッフはお金をもらっているのか?」というので、「基本的にボランティア」ということを伝えるといたく感激していました。「スポーツが、ラクロスが好きなんだね」と。
ホテル側、そしてその他のお客様に気を使わざるを得なかったこの4日間。しかしながら、ホストファミリーと引き合わせて、その後の様子を見ていると、「あの狭い空間で、これだけの人数がうろちょろして騒がしい状況というのは、もうないんだな」と思うとどこか寂しい感じがしました。ほんの数日一緒にいるだけであり、予期せぬことを起こし、気が休まることがない時が続いていたにもかかわらず、寂しい気持ちになってしまう。不思議で仕方がないけれど、それだけ彼らが自分の最近の生活のど真ん中にいたということを再認識した瞬間でした。
大きな舞台で、思いっきりプレーする彼らの姿を、しっかりと目に焼き付けておきたいと思います。