男子日本代表チームヘッドコーチ 大久保宜浩
日本代表はここ数年、個々人における技術は着実にレベルアップしてきている。
日本ラクロスは確実に「上手く」なってきているのである。
日本と世界との差を考えてみよう。まず一般的に言われているのが、体格、技術、
経験の差。この三つの要素はいかんともし難いものであるが、これらは、日本の戦
術によって克服できるともいえる。それよりも我々の考える最も困難な要素という
のは、これらの「差」をフィールド上で選手が感じたときに起こる、精神的な余裕の
欠如なのである。この事がプレー中の一局面において、小さな焦りを生み、ミスと
なる。ミスは局面を重ねる毎に肥大し、結果的に致命的な弱点となって返ってくる。
この現状を打破しない限り、日本は世界の場で対等に戦うことは出来ないと言える。
日本代表が世界に挑む時に考える「速く早いラクロス」とは次のようなものである。
常に相手より先に思考し、判断し、行動する。これにより体格、技術、経験のハン
ディを軽減していくのである。走る速度、パス、シュート等の絶対的な「はやさ」も
必要だが、重要なのは相手より先にという相対的な「はやさ」なのである。
これらの戦術を実践する技術を、代表選手達はすでに持っている(“上手さ”は
身に付けている)。だが、それを諸外国相手に、確実に役割をこなす精神的な余裕、
言い換えれば、自信は持っていないのである(“強さ”は身に付けていない)。我
々が行わなければいけないのは、この戦術をより徹底し、選手個々の能力をフィー
ルド上で最大限に引き出し、確実に役割を遂行するという自信を生むことなのであ
る。そして、この自信が、得点を挙げ、相手に勝つというチームとしての本当の「
強さ」になっていく。
今の日本代表が目指すものは、「上手いチーム」ではない。あくまで「強いチーム」
なのである大久保宜浩(おおくぼよしひろ):
1968年2月6日生まれ。A型。慶應義塾大学出身。
94年日本代表コーチを経て、96年U19日本代表ヘッドコーチ。
97年1月、日本代表ヘッドコーチ就任。
(日本ラクロス協会発行「Japan National team official Guidebook」より」)
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