日本ラクロス協会事務局長 早川靖彦
次代の選手、指導者、審判員、マネージメント側が目指すハードルの高さを決める。
これが98年男子W杯出場・日本代表選手団の仕事である。高飛びで言えば、「バー」
の高さを決めるだけだ。4年後、それ以上の高さをクリアーできたときに「この4年間
は有意義だった」といえる最低基準を設定してくれるわけだ。だからこそ、優勝しよう
が、全敗だろうが、単なる「未来への初期設定」なのだ。低いも高いもないのである。
だからこそ、大会終了後「選手もスタッフも本当に全力で 挑んだ」、「日の丸に恥じな
い勇士だった」とか言う類の言葉は曖昧で許せない。例えば、選手やスタッフが「フィ
ジカルアップ」に真剣に取り組んだとしても、成果を語れないなら、「日本ラクロスは
フィジカルアップに取り組んでいない」となる。逃げ道はないし、逃げる必要もない。
試合結果、順位、態度、技術、戦術、すべてが「98年版日本ラクロス」そのもの
であり、その「バー」より高いところに、例えば残り4年間で到達する方策を練る。こ
の無限のループの快感こそ、競技スポーツの醍醐味だ。求めなくても未来はある。し
かし、向上への道はない。「勝敗」への形容はできる。しかし、自分に嘘はつけない。
「なぜ、向上しなければいけないのか」を科学できたら人類は堕落する。「向上しなく
てもいい」という言い訳をコネルことが可能になるからだ。
とにかく私には華美な期待も、不安もない。何を準備してきたのか。それがW杯の
ピッチの上でどのような成果を出すのか。それを確認し、次代につなぐという無限の
ループの快感を求めて止まないだけ。正直なところワクワクしている。
ひとつ恐いのは、他のアジア諸国への影響である。「アジア人が通用するスポーツな
のか」という事象は、新スポーツ導入を考えるとき、彼らにとって絶大な動機付けにな
ることが間違いないからだ。それにはプレッシャーを感じる。
1998年春、日本ラクロスは生誕12年目を迎えた。今回のW杯参加国11カ国の
うち、日本より歴史の浅い国はドイツとスエーデンのみである。道のりは険しい。この
大会だけではない。正確には毎日が「通過点」だ。しかしすべてが積み重なっていく。
無駄なものは「怠慢」と「欺瞞」だけだ。早川靖彦(はやかわやすひこ):
1967年8月5日生まれ。A型。慶應義塾大学出身。
現、日本ラクロス協会 事務局長。
(日本ラクロス協会発行「Japan National team official Guidebook」より」)
Copyright(C)@Japan Lacrosse Association1998.6.14